モデルナと開会式とクラクフ

7月23日に新型コロナのモデルナワクチンを一発打ち込んだ。

自治体のワクチン予約はすぐにいっぱいになるが、仕事で大量の人々と接しなければならず、罹患すれば5年越しの公演はキャンセルになるこの状態でワクチンを打たないのは末恐ろしい。結局、職域摂取の余りが運良く回り、打つことができた。

綺麗な会場にシステマチックな動き。待機時間を含め30分くらいで終わった。

3時間後くらいから酷い痛みと吐き気に襲われているとTOKYO2020の開会式が始まった。

怖いもの見たさで見ると、一貫性のないよく分からない日本の祭りのようなものが始まり会議のコンペのD案を基に変更に変更と代理店の中抜きを重ねるとこんなプロットが出来るんだろうなと思う。ワクチンを打ち込んだから意地悪な気持ちになっているのかもしれないと思うが、私という人間は体育の内申点は万年2、スポーツ番組と体育会系ホモサピエンスを憎み早幾年だ。開会式にはアートやエンタメを感じるので開会式だけは見ていた。ソチオリンピックラフマニノフの3番が流れた開会式は本当に素敵だったのに自国開催でこれはあんまりだった。海外ウケを意識した結果日本の芸術や文化に対する敬意があまり感じられない。勿論、この国に芸術や文化に対する敬意があったら、の話だが。

解熱剤を飲み、翌日発熱を感じたものの24時間後には収まったくらいで1回目は終わった。

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職場にポーランド人がいて、私は彼女のことが結構好きなのだが彼女も私のことをまあまあ好きらしい。ヨーロッパ人とは思えぬほどシャイで、いつも不機嫌そうだが(彼女にシャイと言うと違うと言い返す所もかなり好きだ)、人をよく観察しており、日本に来て2年なのに日本語が著しく上達しているし、私にしてくる質問がユーモラスで面白く聡明だ。

ゴマをする人間がこの世で1番嫌いだが困ったことに日本人の9割はゴマをすってすりまくるので最悪だ。ゴマをすられるのも大嫌いなので職場の後輩がおべんちゃらをしてきた時に「そういうことをしても私は喜ばないよ」と言うとオフィスが静まり返った。

ポーランド人の彼女の素晴らしい所は絶対にゴマをすらない所だ。どんな人にも態度が同じ人を見ると気分がスカッとするし、私はそういう人が男女問わず基本的に大好きだ。例えば部下にはパワハラをするが権力者に阿るバカより、誰にでもぶっきらぼうな男や女の方が絶対に魅力的だ。

そう彼女に伝えると、綺麗なスラブ系の顔を斜めにして、あなたは時に辛辣なところがあるわね…そう言うと意味深に微笑んだ。私もあなたは人を見る良い目があるから好き。勿論あなたの目の形は本当に綺麗だと思ってるけど。と日本語ならまず他人に言えないセリフも英語にすると言えるから不思議だ。

いつかポーランドに行きたい。ワルシャワとかと言うと、何故?何もないしベルリンに行けば?と詰め寄られた。中欧の歴史に興味があるのと返すとじゃあクラクフに行けばいいじゃんと言う。

 

 

多和田葉子さんのエッセイにクラクフの項目があり、私は彼女と旧市街を歩く姿を想像した。

けれど1人行動が大好きな私たちが国境が開こうがモデルナを2発ぶち込もうが、実際に共に石畳を仲良く歩くことは絶対にないだろう。それでも私はクラクフに行ってみたい。